ヒキダスブログ

テック系や最近見たもの感じたことを書いて残す引き出しスペースです

Unity Developer's Delight に行ってきたよ(前編)

12月16日、忘年会のシーズンですが勉強も兼ねまして Unity Developer's Delight に行って参りました。クリエイター10名が10分ライトニングトークを繰り広げるというもので、そうそうたる面子と貴重なお話が聞けました。

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私自身、Unityは基本操作と簡単なミニゲームを作ってみた程度でしたが、先日行われたdotFes 2017 でも大半の展示でUnityが使われていたことから、本腰入れて扱えるようにしたいと思っておりました。その上で、自身のモチベアップも兼ねていってみたかったというのもあり。そこで聞いた内容を自分なりの考えも添えつつ整理してみました。


大貫 真史さんの「カニノケンカ」

大貫 真史 さんは個人でやっているディベロッパーで、「ACE OF SEAFOOD」をヒットさせたというインディーズゲームのすごい人。最近作ったゲーム 「カニノケンカ」 を作った経緯と、機能周りの話を聞くことができました。
ゲーム機のコントローラが人の動きと連動するような形状になっていない -> カニの形状に近いからカニを使ったゲームにしようと思ったというのは、思いよらなかった角度の発想でした。「作りたいものがあって作る」と言うより「今あるもので作る」という料理の発想に近いのか(?)、ともあれ相手のカニをひっくり返したら勝ちとシンプルなルール性であり、そこに水中なのにぶつかった時に火花が散るエフェクト、カニに武器をもたせる(デモではカニにモーニングスターを持たせてました)、一対多の対決ができたりと異常なくらい(賞賛の意味です)の凝り方をしていて技術レベルの高さを伺えました。

ksymさんの「Unityで作るクソコンテンツ」

ksym さんは、インタラクティブ領域で知らないものはいない中村勇吾 さんが代表のtha(http://tha.jp/)に在籍していたクリエイターです。
ksymさんはこれまでに作ったアプリとそれを考えるに至った経緯を説明してくださいました。痛々しくもひたすら階段から落ち続けるKarateStairs(現在はComing Soonの模様)や、空手と占いと掛け合わせたKARATE URANAI、Unityの WebCamTexture とポストエフェクトで撮ったものをピクセルアートにするカメラアプリUTUや、ワードパズルを簡易化したPX+を紹介されました。
ksymさんのすごいところは、アイディアは〇〇と△△を組み合わせるところの〇〇と△△のチョイスとギャップが色濃く出ていたと思います。例えば、ひたすら階段から落ちるだけではつまらないため、女性が好きなアボカドを階段に配置させたり、KARATE URANAIでも男に人気のある空手と女性に人気のある占いを掛け合わせたら売れるんじゃないか(そしてこれにもアボカドが出てくるw)といった、組み合わせされるもの同士と出来上がった時のギャップ感にインパクトがあり、そこがクリエイター色の強い作品になっていると思いました。

藤岡 裕吾さんの「COLOR GRADINGのススメ」

藤岡 裕吾 さんは、「アカとブルー」という、大量の弾をスマホでも実現させたいわゆる弾幕シューティングゲームの開発者。Made with Unityで記事にされたり、Unityマニアックスを著作した人の一人です。
藤岡さんは、「ゲーム作りは恋愛と同じ」という会社の社訓から、相手に気に入ってもらうためのおしゃれ(ゲームでいう画面映え)をどう工夫するかを説明されました。ポストエフェクトは服で言うところのアウターであるが使い方を誤るとかえってやりすぎ感が出てしまう。それに対し無難におしゃれにできるカラーグレーディングを活用しようという話でした。
確かに、独自性あるゲームを作ろうという思いはあってもデザイナーでないとなかなかに色の加減調整は難しいところ。それなら、SNSの写真にあるような現代のトレンド(一般的な格好いい絵面)を探れば、安定感もあり最大公約的に親和性のあるゲームになりそうな印象を受けました。 ちなみに、藤岡さんのオススメプラグインAmplify ColorAmplify LUT Pack

阿部 貴弘さんの「成功の定義 - インディーズ作品はどうして「失敗」してしまうのか」

阿部 貴弘 さんは、かつてFlashディベロッパーとして「Progression」フレームワークを作ったお人。今は脱FlashしてUnityエンジニアになっているそうです。 その方が、今は新感覚テキストシネマMONOTO-SITUATION という作品でアニメーション監督もされているから驚きです。今回は、ご自身の経験も交えつつインディーズ作品の「成功」とは何かを話されました。
まず、「100万本の大ヒット」と聞くとわかりやすいヒットの指標を示しているといえますが、正確には「目標本数」と「実売本数」によって評価されます(例えば、50万本を目標にして100万本なら成功でしょうし、200万本目標で100万本ならそれは失敗)。辞書の通り、「成功」とは物事を目的どおりに成し遂げることを言うが、それは過去の自分の実績から試算するしかない訳です(同ジャンルの市場規模で見ると宣伝力その他差異が大きいため参考にならないとのこと)。
インディーズタイトルでは販売本数の目標を立てられない、であればどう解決するかを阿部さんは2通り提示しました。一つは、「趣味にして完成を目標とする」。二つは、「作ってどうしたいかを考える」。後者は、例えば企画を売り込みたい・世界観を売り込みたい・就職活動に使いたいとかをあげていました。それが目標になると具体的なアクションが明確になるし、周りの人も協力しやすくなるという話でした(阿部さん自身も応援しがいのある人になることを心がけているそうです)。
これは、インディーズタイトルに限らず日常生活での目標設定にも通じるところがありそうです。目標を据えるにしても、他者との相対比較というよりは今の自分を対象にした相対比較を意識するところは人生訓とも言えそうですし、Unityネタによらず周りにも紹介してみたい魅力的な話でした。

chiepommeさんの「今年Unityで作ったものの紹介」

chiepomme さんは、ハシラス のかわいいものが大好きVRエンジニアで、今年VRコンテンツを10個も作ったというからスゴイかつ羨ましい。そのうちの幾つかを紹介していただきました。
「VR音声認識脱出ゲーム」は流行の脱出ゲームとVRを掛け合わせたもので、VRはヘッドマウントディスプレイだけだとコントローラがないため音声認識で進めるゲームコンテンツになっているそうです。具体的には、Julius と呼ばれる音声認識エンジンを使って音声認識で場所を指示するというもの。ただ、音声認識の精度や普段扱ってないことからコマンドがわからない等色々と反省点があったようです。
他には、「Twitter用MV生成ツール」。音声ファイルと画像から動画を生成するという使ってみたいツールです。作ったオーディオデータのみだとTwitterにあげられない点に着目して作ったそうです。ツールを作ったところリツイートをたくさんされたというから、楽曲を作るクリエイターにも有用なツールですね。
最後は「ハッピーおしゃれタイム」という、女児のアバターを使って、アイドルになったり衣装を選んだり、音ゲーをやったりと「なりきりVRコンテンツ」を紹介しました。通常、VRコンテンツは一人称視点でVR空間の外観を見渡し進むのが一般的ですが、別の何かになりたい潜在的欲求を没入感を活用して実現させたのは興味深い試みでした。
別の性別や種族を選んだりと、違う人生を構築するところは、ネットのオンラインゲームにもあったものですし、今後こういうゲームが増えてきそうな気がします。まさに、「VRは可愛いが不足している」(by chiepommeさん)


と、計10名なので前後編に分けましたが、各人濃ゆいネタが多く果たしてどこまで書けるやら(記憶力的に) 。。頑張って整理して後編につなげたいと思います。