ヒキダスブログ

テック系や最近見たもの感じたことを書いて残す引き出しスペースです

Unity Developer's Delight に行ってきたよ(後編)

Unity Developer's Delight に行ってきて、前編 では最初の登壇者5名の内容を整理しました。引き続き残り5名の方々の内容にも振り返ってみようと思います。


MuRoさんの「MakeItFilm」

Muro さんは、もともと3DCGデザイナーで現在は株式会社エクシヴィのVRディレクターをされています。今回、3DCG制作現場の課題から作った「Make It Film」をご紹介いただきました。
まず、3DCGの制作は細かな作業の積み重ねでできているところが大きく、マウスで物体やカメラを回転してテクスチャを調整して移動して...と、CGの専門知識はもちろんのこと、マウスやキーボード操作、モニター越しの空間把握を要求される作業です。
そこでMuroさんは、VRで映画を作るクリエイティブツールとして「Make It Film」を作られました。直感的なカメラワークや自分の動きを役者(3Dモデル)に投影できるリアルタイム演技と、VRをコンテンツでなくツールとして昇華させたところが素晴らしいと感じました。
現在もアップデートをしている最中で、オンラインでの共同制作や表現のシェアリングも検討しているそうです。別途最初の操作にかかる学習コストはありそうですが、これが実用化し制作現場でも取り入れらえるようになったら、制作効率の向上・制作現場環境の改善に繋がりそうな気がします。

西村 太雅さんの「Draw Near」

西村 太雅さんは、現役高校生でUnityインターハイ二連覇、U-22プログラミング・コンテスト経済産業大臣賞受賞を果たした、将棋の藤井四段のような将来が期待溢れるクリエイターです。もともとは中学生の頃、Life is Tech というプログラミングスクールでAndroidアプリを作ったことがプログラミングを始めたきっかけだったそうです。それから、Unityを使い始めたようですが、AndroidアプリでJavaを習得していたことからUnityのC#もスムーズに扱えるようになったというから、柔軟性の高さを伺えました。
Unityインターハイに応募した「Draw Near」 は、宇宙に漂流しながらも生き延びて地球に帰還するSFサバイバルシミュレーションゲームになっています。例えば、漂流したステーションとドッキングして拡張したり、漂流者を助けて仲間にする等のゲームシナリオとシステムは大人顔負けのものでした。また、各プラットフォームでのパフォーマンス差異がありそれを最適化するプログラムを作ったり、音楽や3Dモデルにおいても全て自作しているそうで、友人と2人で夏休み返上で作り上げたという学生の本気度の高さに感銘を受けました。

ところにょりさんの「あめのふるほし」

ところにょり さんは、「ひとりぼっち惑星」「あめのふるほし」という、独自性ある世界観を作り出しているクリエイターです。
前段が西村さんということもあり、どうやったら才ある若者の芽を潰せるかという冗談から始まり、ご自身のゲームの方向性を紹介してくださいました。
ところにょりさんの作品は「得るゲーム」「失うゲーム」の方向で、自分が作るものは失う要素のゲームが多いと話されました。通常のゲームはリスク・リターンのさじ加減である一方、このお方は記憶を失ってできることが少なくなってくることをやっていたりします。
話は変わりますが、以前田中圭一さんがゲームクリエイターにインタビューする「若ゲのいたり」で、星のカービィを作った桜井政博が「面白いゲームはリスクに見合ったリターンを得られる」と仰っていました(参考)。一見ところにょりさんの作品はそのルールと違うようでありますが、世界観に通じた失う要素がゲームの個性を強めている、そしてその個性がリターンなのではと思いました。
ご自身も売れるためのゲームを作ろうとは思っておらず、高校生の自分が楽しめるようなものを作りたいと仰っていましたし、自分が作りたいものを作るインディーズマインドの強さを感じました。

勅使河原 一雅さんの「スイスでの展示で作ったもの」

勅使河原 一雅 さんも元FlashクリエイターでWeb業界でも有名な方ですが、最近Unityを触りだしたことと今スイスのMuDaで行われている展示について紹介いただきました。
ゴロゴロと横に転がっては異性とキスを交わして水に落ちては転生するINDIA 。父が病気でなくなったことを契機に作った、時間をかけて蓄積される後ろめたさを汚れのようにひたすら洗い流そうとするMUNDA。口の動きを連動させ相互で何か会話なのかやり取りする間を表現しているDiagolus。勅使河原さんの作品は、テクニカルスキルの高さ(MUNDAは人の形状がぬるぬる手足を滑り込ませた動きになっていますが、粒子状のものを使って人型にしているのだとか)もありますが作るもののアート性や世界観が独創的なものばかりでした。
モデレータの方も「勅使河原さんが作るものは、勅使河原らしい仕上がりになる」と評していたように、Unityで作ったとは思えないようなアーティステックな仕上がりがすごいなと安易な感想ではありながらそう感じましました。

山 健太郎さんの「HUMANITY」

山 健太郎 さんは、前編のksymさんと同じくthaに勤めているテクニカルディレクターです。もともとthaにはUnityで作るナレッジが少ないことからksymさんにレクチャーを頂いた経緯があるそうです。
そのthaが最近、開発中ながら動画公開した作品「HUMANITY」 でやった工夫を話されました。私もイベント前に動画で見たことがありますが、あれだけの人物の3Dモデルを滑らかに動かせるのかと驚きました。以前からも鳥を使ったゲームコンテンツ「GUNTAI」では500羽、METAFIVEのライブVJでも魚を100000匹動かしていたというから、大量の物体を使った群衆アニメーションのナレッジ・実績はあるようです。
今回は人物が飛んだり落ちたり武器を使って構えて相手狙って打ったりとモーションが多岐にわたるため、それを管理しつつFPSを高い水準で維持するかが検討課題だったとのことで、Unityも調整次第で物量もコントロールした実装ができるのだなと、まだ自分でも理解が追いついていないながらも感じました。
どういうゲームルールにするのか、現在検討中らしく公開が待ち遠しいところです。


と、濃いネタ続きの10人LTでした。
自分がこれから必要なところに、Unityの基本スキルと応用(シェーダーあたりまで扱えるようになりたい)がありましたが、今回の登壇者のお話を聞いてまずは自分が何を表現したいのかを決めることが大きいと感じました。
これまで技術スキルを磨きそこから作りたいものを作るというものでしたが、Unityはゲーム等のコンテンツを作るツールがすでに揃っているわけであり、「作りたいもの」->「それを作るにはどうやってやるか」と逆算的に考えた方が良いと思いました(もちろん基本操作は先に身に付けるところです)。
そこから技術スキルも追いついてくるわけですし、ちょっとマインド変えてUnityと向き合いたいと思います。そして、Unity Developer's Delightに登壇できるようなゲームやネタも次回までにこさえときたいですね。